心音を録音してみた。

　心臓の音を録音するには、どのような方法があるのか。録音機能付きの聴診器を買えば一番良さそうだが、案外そういうデバイスはなかなか見つからない。あることにはあるが、情報が少なくていまいちよくわからない製品だったり、やたら高かったりするようだ。自分で聴診器を改造する方法もあるようだが、いきなり取り組むにはちょっと難しそうだ。

　一方、すぐに試せる方法としてはスマートフォンのマイクを胸に押し当てて録音するやり方がある。地味に専用のアプリもある。おそらく録音したものに対して自動的にEQやリミッターを掛けて心音部分をうまく抽出するような仕組みになっているのだろう。或いは単純にPCMレコーダーを押し当てて録音したという事例もあるようだ。

　そこで、いつも使っているコンデンサーマイクを胸に押し当てて録音してみた。限界までインプットレベルを上げてDAW上で録音する。トラックにEQ、リミッター、ついでにトランジェントシェイパーを掛ける。完成したのがこちら。

　どうだろう。「こんなんでうまくいくわけ……」と思っていたが、意外とクリアに録音できている気がする。何の投資もしなくても、案外手持ちのマイク一本でいけるもんだ。

　前々から、心音をアーカイブしておきたいと思っていた。その瞬間瞬間に自分の身体から発せられた “生きている証” を保存しておくことには、言い知れぬロマンがある。全ての人が生まれた瞬間にこの音を獲得し、やがて全ての人が失う。確かにその瞬間、そこに動いていた心臓があるんだと、それを記録しておきたい。音楽にだって使えそうだ。鼓動とは、ある意味最も根源的で原始的な、あなただけの、唯一無二のビートだ。100%オリジナルの素材である。